水の流れるだから
アキヨシ
夕暮れの町に水が流れている
ぱしゃぱしゃやってる老人
水色の傘をさしている
ゆっくりと流されている
くるくると回転しながら
誰かが落とした躑躅の花
睫毛のような雌しべ
雌しべの長い女
水嵩がましている
子どもがぷかりと浮いて
きれいな声が聞こえた
私はそれで満足だったから
手で水を掬んで飲んだ
見ると何人か
同じことをしていた
だから夜になると
マッチを持った主婦が私に灯りをともしていった
ぽつぽつぽつと細長い火の柱が立った
水を飲む動作が規則正しくなされている
どこかで
「無理だ」
という声が聞こえた
だから私は、そうかもしれない、と思う
けれどなんのことなのかはもうよく分かっていなかった
だいぶ前から
だんだんと
水を飲む生き物になっていた