泡とステンドグラス
一尾

 優しい振りして
 きっとあなたは本当は誰のことも好きじゃないんでしょうね と
 彼女がそろそろ爪を引いて残していった傷口に
 特別に興味はないけれど


 夜半に覚える例えば窒息してしまいそうなほどの痛みや絶望を
 一体だれが共有してくれるというのだろう
 甘えや弱さなど見せたくないのだ他人に
 どうか慰めないで欲しい
 寂しさなど固有のものだ
 ひけらかすものじゃない
 人としてもしかしたら欠損しているのではないかという不安
 不安 不安 不安不安
 泡を吐くように打ち明けたら誰か抱きしめてくれるのか
 嘔吐


 きらきらしたものが見たい
 それでもし目が潰れてしまってもいい
 五彩のステンドグラスの先にある美しい世界を感じたい
 体の底にある粘着質な水の溜まる暗い沼を
 抱えながらそれでも
 それでも見たい


 誰のことも好きじゃなくても
 
 


自由詩 泡とステンドグラス Copyright 一尾 2011-05-19 00:56:36
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