奢った者
くさいきれ

写真なんてキライ
思い出に固執して生きるのなんて真っ平
いつも新しいことに目を向けて生きていくべき
そんなことを言っていた
ロクなこと無かったし、しても来なかった人生だもん
ハサミでちょん切ってしまいたい出来事もいっぱい

目の前で
すべてをザバーンと来た波が飲み込んで行ったのなら
真っ白な空間だけが残されたのなら
どうだろう?

一瞬、羽が生えたように飛んで行けそうな身軽さを感じた
でも、なんだか今の自分の体のどこかも 真っ白になるようで
寂しい
自分のまわりにいる人までも
そんな虚無の存在に関わり、振り回されてきたのかと思うと
申し訳なかった
消したいのではなく
ちょん切ってしまいたいのではなく
やり直せたらと思っていたんだ
まわりと繋がっていたいんだ

たまたまアルバムを開いた
忘れていた楽しかった日々があった
意外とたくさん
記録媒体が無ければ
思い出の品が無ければ
簡単にどこかに埋もれてしまう私の記憶
まず、この思い出を糧に生きよう
いつかは楽しいことがあるかもしれないと

こんな自分でも生んでくれた親がいる
あんな親でも あの人たちの人生を否定したら可哀想

では、生んでくれた人も 育ててくれた人も
みんな突然いなくなってしまったら
今、自分がいきているのか、死んでいるのか、
何が在って、何が無いのか
どこからどこまでが現実なのか、夢なのか
ものすごい虚無感に襲われる

生きることは、
この虚無感をいかに消して誤魔化して行く術のパレードなんだ
裏返せば
現実 未来 すべてが虚無
昔むかしの偉いお坊さんも言われていたっけ

まわりに楽しかった思い出なんて無い人は
何を糧に生きて行けばいいのだろう
父母も誰も自分を望んでいなかったとしたら
生きたいという動物的本能だけが頼りなのか
その本能を負かしてしまう環境に取り囲まれている人は
どうすればいいのだろう

生きて、自分が楽しいを生み出せる存在なんだということを
ずっと耳打ちしてあげなくっちゃ


自由詩 奢った者 Copyright くさいきれ 2011-05-12 10:28:09
notebook Home 戻る