cloudy
あおば

               110511

金曜日に助けたから
フライデーと名づけられた青年は
ロビンソン・クルーソーの従僕となり
しばらくは一緒に暮らしたという
絵に描いたような仕合わせは無理だから
お天道様に少しだけ逆らって
日の当たらない山陰の道を辿ると
少しの光でも良く育つ隠花植物が繁茂して
我が世の春を謳歌しているようにも見える
汗が引くまでひと休みと
ふんわりとした羊歯の葉の上に腰を下ろし
見渡すと頭上には白い雲が流れてゆく
悠久の時に従ってぼんやりとしたくなるが
午後には雨が降りだしそうだ
車の屋根に乾してある西洋タンポポの根が気がかりだ
乾して刻んで炒ってからコーヒーを入れるのだ
今日一日は晴れるつもりでいたが
今から戻っても間に合わない
隣家の女将にケータイしたが
知らない人の声がした
番号間違いと一言わびて慌てて切ったが
相手の方は何を思ったであろうか
隣家の主人は外出中のようで連絡できない
タンポポの根はうっちゃって先に進むことにした
山陰から尾根に向かう昇りは急峻で
濡れたら滑りそうだと先を急ぐ
登り切れば眺望が続き、先には展望台もあり
その少し先にはロープウェイがあるはずだ
それで下れば湖畔近くにたどりつく
そこからは最寄り駅まで電車に乗って
夕方までには帰れるはずだ
足に力を込めて
少しずつ登って行く







「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。
タイトルは、小川 葉さん。





自由詩 cloudy Copyright あおば 2011-05-11 23:59:18
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