櫂を漕ぐ
電灯虫

地球に空いた穴から あまりに巨大な鯨が二頭
海面抜けて 縦に重なって飛んでいる。
キャンプに使うつもりだったカヌーに乗っている僕は
救命胴衣を付けて 海流に巻き込まれないように 逃げつつも
見たくて振り返るから 親に怒られる。


カヌーに乗ってる人から ボディーボードに乗ったつわものまで
僕ら以外の人も居て 鯨の周りを回遊している。
大きく跳ねた飛沫の量が多すぎて 瞬間的な大雨にさらされる。
大海の中で浮かんでいる カヌーが転覆しないように気をつける。
大きなうねりの中の細心の注意に 変な気持ちになる。


穴に落ちてるかのような世界の中 僕はリズムを崩さず櫂を漕ぐ。
大きな間を取り 鯨のジャンプで打っているリズム ゆったりとして僕は好き。 
2頭の鯨が作る 開いた世界の穴に向かってできている海流
世界が生まれ変わるために 穴に向かっているとしても
今から穴の向こう側に新たに生まれようとしているのだとしても
どちらも納得できる。


表面が滑らかで 弾力がありそう。でも触ると硬いんだろうな。
櫂を使って 岸辺に向かって漕いでいたカヌーの穂先を変える。
親や兄弟は怒って止める。もう穂先は穴と鯨に向かっている。
海流に乗って櫂を漕ぐ。
晴天の下 巨体を増してく鯨2頭が背面飛びを行っている。
比べて1つの点な僕は 一生懸命に櫂を漕ぐ。


自由詩 櫂を漕ぐ Copyright 電灯虫 2011-05-10 01:49:50
notebook Home 戻る