愛読書について語る
深水遊脚
<愛>
ふれることで確かめる
かたちをかたちにしない
きのうでも けさでも 一秒前でもなく
いまの呼吸 いまの温度
<読>
記憶が織り込まれた生地を
虫眼鏡でみたり
埃をかぶった顕微鏡を引っ張り出してみたり
身につけたり 風に泳がせてみたり
着心地がよかったなら
ずっと着けておく
見られないように気をつけて
<書>
水の音がして
草の匂いが鼻をつく
垂らした釣り糸の先につけた
練り餌をもてあそぶ 慣れた魚たち
水は行ってしまう
でも水は木の葉にも花にも汲まれる
きっと元の水ではない
でもそれぞれの形の
何かに入っては
出て行く
この記憶は
壊れもの
<語る>
受け取る何かを
先に考えすぎてはいけない
どんな状態も
受け止められるように
出会えた奇跡そのものが
プレゼントだから
そこが始まり