キリンの夢
nonya


まどろみの風下で
アミメキリンの夢を見た

縁側の木漏れ日の
網目をかいくぐって
鯨偶蹄目キリン科の
枝先に腰掛けていた

うたたねの岸辺で
アミメキリンの夢を見た

首を長くして待ち望んだ
未来は未だ来なくて
霊長目ヒト科の
根っこは震えていた

僕がキリンになったのか
キリンが僕になったのか
よく分からない

ご機嫌な上から目線は
ブッシュに潜む肉食獣の影を
捉えていた

惚れ惚れするような長い足は
忍び寄ろうとする死の予感に
戦いていた

今を走れ
今を生きろ
今日を逃げ切って
明日を生き延びろ

身体の真ん中から
声は湧きあがってくるけれど
キリンである僕
もしくは僕であるキリンは
身動ぎひとつできなかった

キリンの首はどうして長いのか

そんなことばかり
考えているからヒトは
幸せをスクラップ&ビルドしてしまう
生き方をスキルアップしてしまう

正しく畏れながら
密やかに祈りながら
他愛なく生きていきたい

そう願いながらも
ご機嫌な上から目線から
あまりにも呆気なく
日常に転がり落ちた僕は

夢のことなど
もうすっかり忘れていた




自由詩 キリンの夢 Copyright nonya 2011-04-30 16:32:53
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