増えない電卓。
電灯虫

手を離して得られる豊穣さもあって
電卓から加算の記号を外してみる。


ゼロから始め、その終わりがない無限を終局点に見据えて
得てして努力と比例しない努力を費やし、雀の涙でも加算してく。
得られた「はず」は許されず、得られる利益は逃しちゃならん。
ゴールドラッシュというには金脈が足りないから
穴を開けてでも金額を求める。
そんな裏側には底が見えない喪失が
我を避けよ避けよと急き立てて
塗りつぶされていないマスだけしか眼に入らなくて
身動きとれる足場がない。
押しすぎで,加算記号が削れて消えそう。


受身にも受身を選んだ、その選択の力強さがあるように
ゼロの保持だって。
出発点を動かないなんて、ウサギと亀をも乗り越える。
1つも決して自分の所有に含めない。
関係しなきゃ、関係できない。
そんな動的関係の意思表示。
つながりだって、毎日が更新日。
世界の余白だってなかなか減らないから
あるかないかも曖昧な、
世界の中心に楷書でフルネームを書く夢を見る。


そんな冒険心で満ちていたいから
電卓の加算記号を外して
ゼロの表示をキープって。


自由詩 増えない電卓。 Copyright 電灯虫 2011-04-28 01:39:50
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