乾く
乾 加津也
高校生活のころ
湿気高い、と書く癖で
わたしの詩だと読みあてた人は
乾というキザなネームが合わなくておかしいと笑う
貴方には才能があります
がんばってください
一晩中ふるえてかいた
恋文の返事の最後がそれで
暴風雨のようなわたしの焦れは
天気予報のようにはぐらかされたまま洋上を吹きながれる
あなたは栞をはさみ
教科書とともにわたしの狂気を箱詰めにして仕舞い込もうとしたのだろうか
わたしの乾きは
あえぐ渇きではなく
これから生きる年月(としつき)が
世情からころげおちて色あせるほどの
白(むく)へとむかう決意なのだと
いまも
言えずじまい
上気して
制服スカートのポケットから小さくとりだした
伏目がちなあなたの可憐さだけは
時空のひずみを湿らせたまま
がんばることが嫌いなわたしに
いまも円く
浮かびあがる