稀有な人々
salco
石粉と鉄屑で青い星を飾り立て
束の間の目撃者が自己存在証明を試みる
中でも稀有な人々は、歴史を彩るアクセサリー
人類という動物の思い出に花を添える
誰もが誰かと邂逅する為に生まれて来
誰もが稀人を待ちながら生き
思い出だけを携えて
何も残さず死んで行く
稀有な人々はまだしも手紙を置いて行く
あとはつまらぬ肖像の数々と
叶えられたためしのない遺言と
憧れを誘う空の下、苔むした墓碑銘と
それよりも、稀有な若者達はどこだろう?
戦場というケーキの上に飾り立てられた
潮風を瞳に映す無名の若者達は
その絶叫と血飛沫を吸わなかった地面は無いのに?
例えば陳腐な社や十字架が兵隊達の延命の代わり
赴いたのは母の為父の為、女人や子供達の為
死んだのは自由と制圧の為、正義と国益の為
だがお前達を忘れぬ者など一人もいない
老人達は曲がった指で拾い集めた枯れ葉を数え
濁った眼球に霞んだ夕日を映しながら死ぬ準備をする
赤ん坊達はもどかしく身をよじり泣きながら知って行く
薄青い眼球に映る世界が涙で洗われる事は決してないと
誰もが誰かと邂逅する為に生まれて来
誰もが稀人を待ちながら生き
思い出だけを携えて
何も残さず消えて行く