降り来る言葉  LII
木立 悟






ふるえに
ふるえに
こだまする
蜘蛛の巣のむこうの
景の断片
どこへでも どこへでも


句読点
華やかな
何も無さ
息つぎのまの
何も無さ


とどまらず進み
手のひらにはねかえる
さざめきやさざめきや
さざめきの 棘


終わるとたんにはじまるものらに差しのべられる
みどりがかった夜の器
瞳だけが壁を砕いて
帰る場所なく帰りゆく冬


鬼しかいなくなり
鬼ごっこは終わり
削る前の鉛筆を
真昼へ真昼へ真昼へと刺し
色や音や色を聴く


うたいなおし
濡れなおし
半分の午後
半分の遠まわり
水の地図 さあ
どこへでも


止まらぬものに
止まれと言うとき
歯車が腕に
刻まれゆくとき
それでも止まれと
鉱を吐くとき


夜の海へ曲がる路
照らす背は背を
知ることなく知る
渦を描く火の
色と熱を聴く


ひと息ひと息の独楽をまわし
街のとなりの 誰も居ぬ街
巨きな二本の 指の歩み
ただ見えなさを 浴びる歩み


歴史を疑い
すぎてゆくもの
都合よく残されたものを
燃やしゆくもの


夜はどこかへ
きかきかと鳴り
不確かな目盛りの傾きへ
すべてをすべてにと傾いてゆく


雨のひとつひとつを下り
櫛にとどまる光
梳きながら梳かれ
鏡に鏡を置いてゆく


鳥の影 鳥の火
たちのぼり たちのぼり
空の鳥の森となり
午後ふらせ 午後ふらせ さあ
どこへでも


























自由詩 降り来る言葉  LII Copyright 木立 悟 2011-04-23 23:36:01
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