名もなき明日
望月 ゆき


朝露が、透明に落ちて、
ガラス玉、

ふりそそぐ、すべてのことに、
驚かないで



あの高台にたたずんで、
きみが眺めていたものがなんだったか、
それをたしかめるために、
わたしはこれからも、生きていこう







まぶたの裏側の露の揮発性 幾度も還る 空の湖



希望的観測の上 散りつもる 花弁の白を反芻する朝



背中越しスローモーションで崩れゆく世界を眺む午後のルーペで



遠浅に浮かぶ箱庭 星くずを抱いて仰ぐ揺るぎない空



沈黙の庭に芽吹いたムスカリの 笑い声にも似た鮮やかな



柔らかな石畳から蒸発す 悪意なき海の声と涙と



弧を描く鳥の軌跡を虹という きみの輪郭だけがとなりに



白昼に空中分解した過去よ 集え 一本松を座標に



彼方まで見渡す森の底の底 宝さがしに出かける朝に



永遠よりも長い夜のその先の 名もなき明日を照らす太陽







短歌 名もなき明日 Copyright 望月 ゆき 2011-04-18 00:37:39
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