添う 春に
砂木

白く降り止まぬ豪雪に立ちつくし
枝は のしかかる重みにバリリと折れ
春の澄み切った青空の下

まるたんぼうになって
根はネズミにかじられ
もう売り物を実らせない

切り倒され処分される
何十年も大事に育てられた林檎の木

雪の降り続く中
それでも必死に 枝の雪を降ろし
木を一本一本 雪を掘って守り
空から降り続く雪に立ち向かい続けた
そんな畑の木だけが生き残り

苗木は ぽきぽき とえんぴつの芯のように
折れて散らばり
夢も未来も植え直さなければ続かない
悔しさに黙り込むしかない天災でも

まだ 折れても実をつけそうな
可能性のある枝には 添え木がほどこされる
どこまで保てるかはわからない
やってみなければ 助けてみなければ でも

豪雪も春には勝てない
春も夏も秋をも知る農民に
消せない雪はない


自由詩 添う 春に Copyright 砂木 2011-04-17 18:35:44
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