分別ゴミ
間村長

 祈祷師は暇だった。まずいこのままでは食いっぱぐれて仕舞う。
 仕方ないのでスーパーに就職する事にした。就職と言ってもアルバイトだけど。
 主に資源ゴミとカートの回収を担当する事になった。
 すると資源ゴミの中の食品トレイをを何遍言っても燃えないゴミボックスに入れられる事が重なり、その回収が煩わしくなった。
 「食品トレイはですね、不燃物ボックスでは無くてですね、資源ゴミのトレイ専用ボックスに入れて頂きたいですね」
 と何度も祈祷師は説諭した。ほとんどの人は苦笑したり、あら知らなかったわと言った感じでやり直したり、守ってくれたりするのだが、偶(たま)に
 「ナニ?俺に指図するのかって?」
 と言う客が一人とか二人居る物で、これが結構ストレスだった。
 ワーキングシェアーとかで、バイトは少時間にして祈祷師はこれまた短時間の雇われ僧侶もやって居たので、入相(いりあい)の鐘や早朝の鐘をごんごん強く衝いてある程度ストレスを解消して居たが、そんなやり方ではそろそろ限界かなと思う事もあった。
 その上ごんごん強くついて居るとこれに対しても苦情を言う人が居て、これでは安住の地が無いと思う様になった。
 そんなこんなで強烈なストレスを抱え込んでいる所へ、
 「馬鹿野郎そんな事ぐらいお前がやれ」
 と言われて仕舞いさすがの温和な祈祷師も堪忍袋の緒が切れて仕舞った。
 「ナニ?食品トレイを分別して捨てるぐらい、小学生でも分かる事では無いか、それをすっとぼけて(お前がやれ)だとうぉー堪忍袋の緒が切れた」
 と客に殴りかかって仕舞った。その上
 「君ナニやって居るんだ」
 と止めに入った専務も張り手でぶっとばして仕舞った。実はこの祈祷師、昔高校生の頃相撲のインターハイで優勝するほどの実力者だったのだ。
 果たしてこの祈祷師、この不始末をどうつけるつもりだろうか(続く)


散文(批評随筆小説等) 分別ゴミ Copyright 間村長 2011-04-13 21:39:13
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