ぺんぎんのともだち
田無

むかし、「なんきょく」というおおきくて

さむいくにに、ぺんぎんのこどもがすんでいました。

ぺんぎんのこどもは、こおりのうえを、よちよちとあるくのですが、

まわりにいるほかのぺんぎんたちは、おとなもこどもも

こおりのうえを、さっそうとあるいていました。

ほかのぺんぎんたちが、さっそうとあるいているすがたは、

ぺんぎんのこどもには、まるでとりがこおりのうえをさっそうと

とんでいるようにかっこよくみえました。



ぺんぎんのこどもは、まねをして、さっそうとあるいてみるのですが、

どうしても、ほかのぺんぎんのようにかっこよくあるけませんでした。

また、ぺんぎんのこどもは、ほかのぺんぎんのこどもに、さっそうと

かっこよくはなしかけたりもしましたが、やっぱりかっこよくはなせませんでした。

ほかのぺんぎんのこどもたちは、よちよちあるきのぺんぎんのこどもを

ばかにして、なかまはずれにしました。

そうして、いつもひとりであそんでいたぺんぎんのこどもは、

ほかのぺんぎんのようにさっそうといきられないじぶんをきらって

まいばんひとりでなきました。



あるひ、ぺんぎんのこどもはなかよしのおじいさんぺんぎんにききました。

「どうしてぼくはほかのぺんぎんたちのようにさっそうとあるけないの?」

おじいさんぺんぎんはいいました。

「ほかのぺんぎんたちは、さっそうとあるいているようにみえるけど、

さっそうとあるいているふりをしているだけなんだよ。

おまえはおまえのままでいっしょうけんめいいきればそれでいいんだよ。」

ぺんぎんのこどもは、それをきいて、すこしげんきになって、

まいにち、ひとりでよちよちとあるきました。

あるひ、いちばんかっこよくさっそうとあるいていたほかの

ぺんぎんのこどもが、よちよちあるきのぺんぎんのこどもにはなしかけました。

「ぼくは、いままでさっそうとあるいていたけど、ほんとうはむりをして

あるいていたんだ。これからはぼくもよちよちとあるくよ。」

ぺんぎんのこどもは、うれしくなって、まいにちいっしょによちよちとあるきました。



しばらくたって、ぺんぎんのこどもがいるむれが、となりのりゅうひょうに

くらしているべつのぺんぎんのむれにへいごうされることになりました。

べつのむれにいるぺんぎんたちは、こちらのむれのぺんぎんたちよりも、

もっとさっそうとあるいていました。

また、べつのむれにいるぺんぎんたちは、みんな、ふしぎなほんをもっていました。

そのほんになまえや、おもったことをかくと、むれのぺんぎんたちや、いままで

あったこともないほかのくにのぺんぎんたちにそれがつたわるというふしぎなほんでした。

こちらのむれのぺんぎんたちは、そのほんをとてもかっこいいとおもい、

じぶんたちもそのほんがほしいとおもったので、よろこんでべつのぺんぎんのむれに

へいごうされて、ぺんぎんのこどもがいるむれをさっていきました。



ぺんぎんのこどもがいるむれには、ぺんぎんのこどもと、ともだちのぺんぎんと、

おじいさんぺんぎんのさんにんがのこりました。

ぺんぎんのこどもは、いっしょによちよちあるいてくれる、おじいさんぺんぎんと

ともだちのぺんぎんがいたのでさみしくありませんでした。

ながいねんげつがすぎました。



おじいさんぺんぎんは、もっとおじいさんになって、しがちかづいてきました。

おじいさんぺんぎんは、ぺんぎんのこどもと、ともだちのぺんぎんにいいました。

「このふしぎなほんをおまえたちにやろう。」

おじいさんぺんぎんは、むかし、となりのりゅうひょうのくにで「えんじにあ」という

しごとをしていて、そのふしぎなほんをつくったぺんぎんだったのでした。

またおじいさんぺんぎんはいいました。

「このふしぎなほんをつかってほかのくににいるよちよちあるきの

ぺんぎんたちとともだちになりなさい。そしていっしょになかよくくらしなさい。

おまえたちのくにがおおきくなったら、さっそうとあるくぺんぎんたちとも

ともだちになりなさい。おまえたちがそれぞれのこせいをみとめて、なかよく

くらすことがいちばんだいじなことなんだぞ。」

それから、おじいさんぺんぎんは、しにました。



ぺんぎんのこどもと、ともだちのぺんぎんは、まだこどもだったので、

おじいさんぺんぎんのはなしがあまりりかいできませんでした。

でも、いつかおじいさんぺんぎんのいいつけをまもろう、とはなしあいました。

そして、きょうもふたりで、よちよちとえさばまであるいていきました。


自由詩 ぺんぎんのともだち Copyright 田無 2011-04-11 16:18:59
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