故郷(ふるさと)
……とある蛙

朝から酒を飲んでいる
涙をこぼして飲んでいる
都会の空地の駐車場
道行く人は見ない振り
電信柱のゴミの横
フェンスの縁に片手掛け
地べたに座り飲んでいる
通勤客は足早に
見て見ぬふりのホームレス
涙をこぼして呑んでいる
思いは北の故郷の
港と狭い山の畑
家族はだれもいない土地
それでも涙が止まらない
故郷の街は冷たくて
彼の居場所は無かったが
辛い仕事は嫌になり
結局都会の片隅で
猫と一緒に残飯を
あさってその日を過ごしても
いつか帰れるその時を
微(かす)かに思う毎日が
生きる縁(よすが)のホームレス
結局都会の片隅で
瓶から集めた残り酒
朝から酒を飲んでいる
涙をこぼして呑んでいる。


自由詩 故郷(ふるさと) Copyright ……とある蛙 2011-04-07 23:44:51
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