Six

男の料理は色々うるさい
彼の作るカレーは実に凝っているらしく
野菜だの果物だのがどっさりと入っていて
長時間煮込むのだそうだ
それはさぞかし美味いだろう
しかしうるさい

特にすりおろした梨を入れるのが
良いらしい
肉が柔らかくなるのだと
うるさいうるさい

汗にまみれてどっぷりと彼に浸った一日
日が高くなり低くなり
わたしたちは睦みあい
互いに互いを食い散らかした食べかすが
ベッドの上に散らばっている

冷蔵庫で冷やしておいた
梨を剥いて食べながら
(皮を剥いたり芯を取ったりするのは、
 残念ながらわたしの仕事だ)
今日がもうすぐ終わってしまう
わたしがこの先カレーも梨も嫌いになったら
どうしてくれるの?
あなたは責任を取ってくれるんでしょうね
なんてことは言わない
黙ってわたしたちは梨を齧る

梨を齧る音は
テレビの音にかき消されるぐらいがいい


自由詩Copyright Six 2003-10-15 08:21:26
notebook Home 戻る