空と川(火)
木立 悟





空から川へ
融け落ちる途中の樹が
水面で動きを止めている
野のむこう
そぞろ歩きの雨曇


穏やかに酷く
匂いのひかり
壁づたいに
曲がりゆく影


川から海へ
川から海へ水を梳く
ひとつの手が
ひとつの手を押す


光の上に
蒼を着る蒼
焚きしめることなく焚きしめて
目を深く
閉じて


鳥の棲み処に触れ
目も頬も手も鳥になり
夕暮れが来るまで遊んでいる
聞こえることなく 騒がしく
明るく


音だとわかるかたち
空を最後の色と持ち
道を斜めに斜めに上げる
音へは音を落とさぬかたち


騒明を騒明に拾い集めて
ふるえが描くふるえの円を
ただ見つめては積もらせてゆく
白の裏は白 ふちどりは蒼


風の影がすぎる
夜をつかみ 離すうた
そのもののうた
そのままのうた


空気と空気のあいだに
鉄の橋が架かり
傾きはじめている
それでも人々は
通ることを止めない


空から川へ
火が落ちてきて
火も空も川も等しく燃える
燃える野のむこう
燃える野がつづき
雨曇は遠くを歩き
雨曇は 遠くを歩く





































自由詩 空と川(火) Copyright 木立 悟 2011-03-28 21:09:06
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