ちょうむすびとおりがみ
木屋 亞万

手ができて間もない頃
ゆびを動かすのが苦手だった
骨がぷにぷにのお肉に邪魔されて
うまく曲がらない
ゆびとゆびの仲もよくなかった

ちょうちょむすびは絆が大事
右手と左手
息をあわせて
ヒモのわっかを通さなければ
結ばれることがないままで
できたと思って手を離したら
たらんとヒモは元通り

くちびるを手でゴシゴシ撫でると
ゆびは苦い味をしていた
紙をキレイに折るのも
苦手なこのゆびは
はしとはしが合わさるように
角と角がかさなるように
折るのがとても難しかった

ヒモのチョウチョも
紙のツルも
この手からは生まれずに
おとなの大きな指先の
魔法がなければダメだった

けんかするゆびで結んだチョウチョは
逆さを向いてごきげんななめ
色紙で折ったツルも
顔を不細工に歪めていて
ふしだらな白い裏地がチラチラ見えた

やがて筋肉が手の骨を包み込み
ゆびも長く伸びていった
今では指先も器用に動かせる

でもチョウチョもツルもご無沙汰で
もし子どもがいなければ
もう出会うことはなかった

ゆびの魔法は
親と子の間に起こる
ちいさな奇跡


自由詩 ちょうむすびとおりがみ Copyright 木屋 亞万 2011-03-26 23:02:59
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