朝の出来事
花形新次

電車が混むのが嫌だから
駅までのバスは
いつもより1時間も早く

するとちょうど
妻と息子の
通学時間と重なって

息子のこだわりは
バスの乗り方にもあって
いつも最後部一列席の右の端
その隣には妻が座る

妻の隣に
僕が座ってしまうと
他の人が
左に入れなくなるから
僕が左端に座って
真中を空けておく

妻と僕に隙間が出来る

次のバス停で
中年男性が乗ってきて
妻と僕との隙間に座る
そして
妻に挨拶をする
「今日も寒いですね」
「そうですね」
「もう学校は普段どおりですか」
「ええ」

毎日繰り返されている会話
毎日繰り返されている光景

ただひとつ違うのは
隣に僕がいること
中年男性の知らない
僕がここにいること

「へへ、おもしろいや」
こころのなかで思っていた

当たり前だけれど
僕の知らない世界が
こんな身近にもあって
そのなかでいろんな
関係が広がっている

「焼きもち焼いた?」
「アホ」
妻はなんだか
楽しそうで


自由詩 朝の出来事 Copyright 花形新次 2011-03-25 13:42:55
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