笑い話 / ****年不明
小野 一縷

ぼくは誰からも
愛されていると感じたことが無い
付き合っていた人は何人かいる
好かれていたことはある
求められていたことはある
何人目かの君は 愛していると言ったけど
その意味が分からなかった
伝わってこなかった


誰かを好きだったことは何度かある
でも
見栄ではなく 執着ではなく 好みではなく
誰かを愛していたことは無い
何人目かの君は 愛はそんな理屈じゃないと言ったけど
その意味が分からなかった
伝わってこなかった


きみは 随分と長い間 通院している
その半分の責任は ぼくにある
電話で きみが言った

「ぼくが死んでも *はしっかりしていてよね」

「その時は責任をとるよ」

ぼくの涙声に
きみは言った
「愛って不思議だね」

「ああ」
ぼくは頷いた


きみと知り合って*年 この繋がりを
愛と呼ぶことに 何の迷いも 驚きも無かった
その時 「欲望無き愛」を  ぼくは知った


独り 
生理的な欲求不満と 相反するただ一つの愛を ないまぜにして
今日も誰かのことを 想ってみる


ぼくは まだ
愛を言葉にする術を知らない








自由詩 笑い話 / ****年不明 Copyright 小野 一縷 2011-03-15 13:49:32
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