冬眠を憐れむためのうた
木屋 亞万

冬がうたた寝を始めて
目を閉じるたびに
春の匂いがする
生まれたての花弁の匂い

つめたい風に目を開けば
空はうすい水色で
か弱い雲が流れている
太陽は北風と仲たがい

春はすぐそこに来ている
舞台裏では梅雨が準備体操をし
耳を澄ませば大地からセミの発声練習が

秋と駆け落ちした葉っぱも
樹木とヨリを戻す頃

冬と夜との密約が
破られる気配

起きられぬ冬の朝から
目覚めを忘れる春の日に
切り替わる
実に滑らかな変化

街の木が色とりどりの花をつけ
控えめな木も
目に冴える黄緑

道行く人も鮮やかな服に身を綴じ
スカートが
裸足と素足が
交差する

ウサギの白い毛を筆頭に
温かい白が溢れ出る

冬が眠りにつくことを
冬眠と言わず何という
そのことを悲しむものは
もう私以外はいないだろうね


自由詩 冬眠を憐れむためのうた Copyright 木屋 亞万 2011-03-10 02:46:48
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