愛犬ピキ
たもつ

 
 
ピキは犬ではないのかもしれない
犬だと思ってドッグフードまであげていたのに
買ってきた犬図鑑に載っているどの犬とも
その形状は一致しない
図鑑の犬はすべて四本足なのに
ピキは六本足で歩き、走り、寝る
図鑑の犬は長い短いはあるものの
全身毛に覆われている
ピキには毛と思われるものは無く
皮膚は見た目が金属のような質感で
撫でると触感は柔らかな紙に似ている
耳だか鼻だか目だか分からないものが
顔の真ん中に二つ
幼児向けの絵本には
いぬはわんわんとなきます
と書いてあるけれど
ピキはポクポクと鳴く
というより泣いている感じがする
体の大きさは適当な比喩が見つからないので
いつも説明に困る
それでもリードにつないで散歩させていると
可愛いわんちゃんですね、と人は誉めてくれる
ピキは嬉しそうにしっぽを振る
位置的にはしっぽで間違いないと思う
甘えたように体をこすり付けてきたり
水っぽい舌で舐めたりするけれど
それを愛情や友情と呼ぶのは
僕の勝手な思い込みかもしれない
ピキが行動するにはピキの事情があって
本当に心が通じあっているのかもわからない
それでも僕はピキを守る
ピキが犬であるかどうかなんて関係ない
僕は犬図鑑を捨てる
 
 


自由詩 愛犬ピキ Copyright たもつ 2011-03-08 22:47:27
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