梅見のひと
恋月 ぴの

やっぱ自然には敵わないよね

今年はやたら寒いだけかと思ってたら
河津桜は紅いろの可憐なほころび揺れているし

これはとばかりにお出かけした越生の梅林
朝晩は冷え込むためなのか未だ七分咲きとは言え
紅梅白梅はなんだか目出度さあるような

低く横に張る食用梅の枝先に気を払いながら
家族連れがお弁当の場所を探してる

何か気に障るのだろう
お母さんに手を引かれた男の子がぐずっていた

甘えているだけなのかな

お母さんに付き従うはお父さん
両手にはお弁当やら敷物やらと大忙しで

今どきの育メンってことだよね

わたしが子供だった頃は
先頭を歩む父の一存でお弁当の場所は決まってしまい
父は見晴らしの良い席に赤ら顔して陣取っていた

わたしんちだけだったのかも知れないけどさ

お弁当をつまみ飽きた子供たちが騒ぎ出すのはいつものことで
それをいなしながらも箸を休めないお母さんってタフ過ぎる

遠目だと梅なのか桜なのか首を傾げる花音痴だけど
こんなに至近距離なら嫌でも梅って判るわけで

広場の方から女性の歌声が聞こえてきた
テイチク専属らしい売れてない演歌歌手が紹介されて
こんな雰囲気には耳障りというよか似つかわしさあったりする

あれっ、きよしのずんどこ歌ってんじゃんか

俺、育メンやるからさ、おまえ働いてくれよな!

そんな顔した男がほざく



自由詩 梅見のひと Copyright 恋月 ぴの 2011-03-07 19:42:23
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