「小さな海で」
ベンジャミン

ひろった貝殻をスコップにして砂浜をほると
そこには少し離れた海とつながる

小さな海ができる

何度かの波の繰り返しで
まるで何もなかったみたいに消えてしまう

小さな海ができる

大きな揺りかごの中に生きる誰もが
きっとそんな夢を見る

ひとりぶんの小さな夢をつつむように
波がさらってゆくのを
儚いと思うのは簡単なことかもしれない

砂浜には
そうやってほられたたくさんの穴が
ひとときの小さな海となって
消えていった跡がある

幼い頃に抱いた夢も
大きな海とつながって
今ではどんな姿だったか思い出せない

小さな海で

今の自分の姿を映してみたら
思い出せるだろうかなんて
そんなことは知らない

小さな海は

その広さではおさまらない夢を
その広さよりも大きく深くすいこんでいた

小さな海を

また
この砂浜につくろう

そして何度かの波にさらわれて
まるで何もなかったみたいに消えてゆく

その姿を忘れずにいよう

大きな海とひとつになったとき
それが自分の夢であったことを

いつでも思い出せるように


自由詩 「小さな海で」 Copyright ベンジャミン 2011-02-21 16:44:17
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