選ぶ、捨てる、
高梁サトル


何かを見出そうとして足掻く
行き着くところは一緒であるのに
違うと、対話する

主観と客観の狭間で彷徨う
科学の発展とともに神秘が勃興したように
絶えず揺れ惑う幻のような実在を
維持する為の証明
個々の幸福と全体の理由、それは均衡

ピースの欠けたパズルのような歴史
広く支持されたものだけが書き残されてゆく
埋め尽くされてゆく不完全な記録を前に
事実を咀嚼する
誤解や曲解をそのまま飲み込んで
腹の奥底で消化する
それはわたくしにとっての目的
生きてゆく為の、自然の過程

健やかに生きたければ耳を塞ぎ
眼に映る世界だけを妄信し
希望を語ればよい
一見高尚な欲望に身を任せ
己を肯定し続けていけばよい
やわい真綿で
眼を反らしたくなるものすべてを包みこみ
羅針盤の傾斜だけに注意を払い
ゆるやかに
穏やかに
朽ちてゆけばよい

わたくしは
語ることをやめはしない
言語を知った
その瞬間から始まった受難のような
陣痛に苦しむ母体を想像して
何度も何度も

産み落とす
分身を

苦痛と
悦びと共に


自由詩 選ぶ、捨てる、 Copyright 高梁サトル 2011-02-21 03:40:50
notebook Home 戻る