バルコニー
番田 


暗闇の中に見えたものとは 一体何だろう
ああ それは 一体 何だろう
手にしたものたち 例えば 眠りの奥で
それ自体は面白いものなのだろうか
それとも 長い 旅路の果てなのか
理解することなどできないけれど
私は今日も歩き続けた
声もなかった
声も 色も 無くして
生きて行くのは きっと 幸せなことだ


幸せなのではないのかもしれない
わからないけれど 眠くなる
そんなことはどうだってかまわない
未来を そこで 見ていたいだけ
一人 永遠に 眠りたい
夢を いつも 忘れていたい
山が遠くに見えていた
ピーヒョロと
鳥が鳴いていた
私は立っていた
何も見えなくなっていた
見知らぬ遠くの街角で
夜に吹かれていると 何だか 眠くなる


死にたくならないのは きっと 人だけだろう
私は金魚を飼ったことがあるけれど
色とりどりの模様だけが 私の記憶には 残っている
誰も知らない日曜日
映画館の座席にひとり 腰掛けている
適当なのかもしれなかった
そうなのではないとするのなら
私は釣り糸に身を任せていたいのだ



思いを浮かべた
何者かによって 沈む時を そこで 待っていた
きっと そうだった
赤く沈んでいく夕暮れだった
今日も 誰かが歩いていく
影がそこに揺れている
何も知らない子供に魚が釣れるのはなぜだろう
仕掛けが新しいからだと 聞くけれど
そんな理由ではない気がした
運命というのは 誰にも 存在するのかもしれない
そうではないとしたら それは
常に役割なのかもしれなかった


外は 寒すぎた
鼻紙を一枚取り出した
太陽が見えていた
日が暮れていく
私は思いを出て行きたかった
場所は いつも 確保されているだろう
そこは 私の向かうべき部屋なのか
ああ眠くなってきた だけど
それは遠い外回り営業の途中なのかもしれなかった



何もすることを無くしていた
コンビニで 休憩を取った
弁当を食べると 自分だけの世界みたいだった
満員電車は止まる事を知らない
携帯電話は鳴らなかった
私は笑っていた
どこに行ったことにするべきだろう
ただただ 眠かった
私は 何もわからなかった


ハンカチをポケットから取り出した
夕焼けだけが 目にしみた
見たことがある 風景画のようだ
それは とても繊細なタッチで描かれた
いつかのフランスの田園風景なのかもしれない
鳥が遠くから旋回してくる
そして 何も 見えなかった
価値のあるものだとは わからなかったけれど
みんな勝手にすればいいと思った



誰も もう 君の家にすら行かなくなるだろう
そんな風にしてすべての物事は忘れ去られていく
何もしたくはなかった
暗い部屋で テレビをつけた
あの甘酸っぱいカクテルの香り
浴びるほどに酒を飲んでいたのは いつのことだったのだろう
若い頃の 元気さは 私には 無かった
年老いたものだと ぼやいた
そのようにして いつも 私は自然さを失っていくけれど
街をさ迷っていた


どんどん年老いて行く
それとも 一体 私は 何者なのだろう
暗い影にまみれた 家路を歩くのは 本当に大変だ
日曜日の夜の暗い顔が 目に浮かんだ
月曜日の太陽が人をまた 迎え入れることだろう
誰一人 拒むことの出来ない 現実だった
私は 何かを見ていた
灰色のアスファルトを歩いていた
緑色の草が見えた
時が流れていた


私は笑った
道で 防腐剤の匂いがしていた
狭すぎる 都会のマンションなど
住んでいる心地が いつもしなかった
死んだような顔をした人と また いくつも すれちがう
私は笑った



ここは きっと 人の住むべき世界ではありえないのだろう
そうして 眠った
歌が聞こえた気がした
動物たちが 空を駆けていく
何もかもがどうでもいいと思った
架空である 世界を 私は目にしていた
全てが 白かった
雪が降ってくる


自分自身に真剣になっている人間などとは いつも 会ったことはない
何かに真剣であることなど 回りにすぐにやめさせられたから
誰一人 そうすることなど やめてしまった
子供がプールに出かけていく
また眠気がやってきた


それが嘘だというのなら ああ 人とは 一体 何者だろう
言葉は 何も 無かった
サッカー選手に憧れていた
生まれた時から 何も持たずに生きていくことが
納得できないまま 死んで行くのは 誰にも仕方の無いことだ


風が吹いていた
私は意味もなく 笑った
負けず嫌いだったのかもしれない
音楽はいつも それを 解き放ったのかもしれない だけど
言葉はつじつまを合わせるだけの代物だった




自由詩 バルコニー Copyright 番田  2011-02-21 02:07:25
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