雨音のひと
恋月 ぴの

コツコツと先を急ぐ女のひと
両かかととも赤く腫れあがっていて何だか痛々しい

足に合わない靴だったのかな

駅前広場は折からの霙混じりで
軒際で立ち止まっては、いちいち傘を開くのも鬱陶しくて

私ならぺったらこな靴履いてばかりだけど
ちょっと高価でおしゃれそうなハイヒールだったし
改まった雰囲気の黒っぽい上着を羽織っていた

あいにくのお天気となってしまったよね
なかなか都合通りには晴れたり曇ったりしてくれないもので

大切なイベントのときに限って電車遅れたりして
そわそわせかせか落ち着かないし
それでもってお腹まで痛くなったりしちゃう

さっきの女のひとも立ち止まって雨傘を開いてる

痛くないのかな?
って痛くないわけないよね

ごめんなさい

肌色のストッキングが痛々しさを際立たせているようで
ちょっと小走りになって彼女を追い越してみる

傘を叩く雨音の強さに思わず首をすくめ
撥ねる爪先が歩みを急かし

このまま雪になったら積りそう

お天気と関わりなくひとは出かけなくてはならないし
たぶん何かしらのドラマがあって
それって人それぞれのマジな思いに彩られている

立つんだジョー!

ってテレビから流れる台詞は懐かしすぎる
立つんだって言われても立たせるもの、私についてはいないけど
映画観たらきっと泣いちゃうんだろうな

打つべし!

歩道の水溜りなんか避けながらへっぽこステップ踏んでみた






自由詩 雨音のひと Copyright 恋月 ぴの 2011-02-14 19:56:10
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