彼の名は確か太郎といった
そうではないかもしれない
宏だったかもしれない
武だったかもしれない
なんにせよ
平凡でいい名前だった
そんな気がする

彼は足が速かった
かけっこをすれば一番だった
いや、それは別の子だったかもしれない
そういえば当時はみんな身軽だった
なんにせよ
彼は鬼ごっこが好きだった
そんな気がする

彼はよく頭が切れた
悪戯はいつも彼が仕切った気がするが
そうでもない気もする
近所にガキ大将がいたからそいつと間違っているかもしれない
なんにせよ
彼が浮かべるいたずらっ子な笑顔は輝いていた
そんな気がする

ひとつだけ、
彼が風の子供だったことだけ
それだけは
忘れずに覚えている