時のこちら側のフェブラリー
小池房枝

ボツリヌス菌がポツリと呟いた。僕、ボツリヌス。ポツリじゃないもん。

白鳥の王子の翼を手まくらに金の梯子をほどく娘子

ビロードのつぼみは輝くモクレンの裸体のための毛布だそうです

その彼女 魔女にして塔のラプンツェル 白鳥を森の湖に囲う
  
竜田姫 佐保姫 冬はうつた姫?ネットに古き神の名を探す

たまに聴く中島みゆきに煽られた程度で恋などするか自分よ

温泉の夏の匂いはああそうかプールの匂いだ消毒の塩素

明け方にふと目が覚めて外に出て見上げると空にサソリがいました


クリムゾン・スターは兎の目でしょうか血の色でしょうか変光星です

だるまさんがころんだ今日はどの花も咲いたりせずにじっとしてなね
 
鬼きった!明日は一気に三月の陽気だそうです春の子ら走れ
 
ツグミ胸の模様を見せて鳴き交わす季節のうちに声を聞かせて
 
沖縄より海を駆け来る桜たち緋色はやがて薄紅に変わる

ランドセル歌えよ子らの背中から本や筆箱ぴょんぴょん跳ねろよ

雨脚は暮れていっそう忙しなく二本足等の家路を急かす

雨粒を弾いてピアノの音がする傘できないかな透明な和紙で

 
やわらかな雨やわらかなかいなして夜と土とを抱きしめている

何もかもまぶしい季節にさようなら草木は光を空へと応える

月も星も見えてるそれではさらさらと白く降り来るこれは何かな
 
ひとまわりちっちゃなすみれが咲きました
すみれもともとちっちゃいのにね
 
ひとの生死に関わる覚悟をネット上で問われ少年「興味」と答える

金星と同じ色した金星という名のリンゴは果物の匂い

嵐明け水族館の前庭の波打ち際には貝の花びら
 
二巻きの二色の殻に白き肉包み守らせヨモツヘグイニナ


特設のチョコ売り場今宵撤去するバイトの兄ちゃん今夜は雨だね

あたたまると猫は対流おこすらしいカーテンのぼって行くやつがいる

デコレーションケーキのピンクのクリームの薔薇の飾りのような侘び助

太陽は誰も照らしてなんかいない此処には地球が回ってるだけ
 
ほら、あの木。桜かどうか紫に樹皮がなんだか光って見えない?

本という漢字は逆さに見てみると地面に咲いてるチューリップみたい

モクレンのちょっと尖った蕾にはモクレン太郎が隠れていそうだ
 
ヴェガのぼれ夏の織り姫まず春のあけぼのを紡げ冬をほどいて
 

来月はモモの節句だカシオペイア遠い異国のぶかぶか上着の

湯がくとき一茎よけた菜の花よ咲きな咲かねば食べてしまうぞ

丸くなりもせず布団から首だけを出して寝ているうちの馬鹿猫
 
今頃の一番星はと見上げれば一つじゃなくて冬の綺羅星

半月は今宵さそりの心臓を訪うようです丑三つ時過ぎ

遙か遙か通勤電車で読む本は井上靖「シルクロード詩集」

一日の足しにしちゃれと「らき☆すた」を聞いて出勤まだ火曜日だぜ

宵越しの春一番に段ボールが横断歩道を渡って行った


茜さす紫野ゆき標野ゆき雪ダルマきみが手を振っている
 
フェスティナーレンテと呟き思い出す「はじめ人間ギャートルズ」の歌
 
わぁデージー今日は寒いねガーベラもタンポポみたいに花を閉じてる
 
電線にスズメが一羽、電線に積もった雪と降る雪の中に
 
まっすぐな海岸に沿ってひとすじに寄せ来る波はとても長くて

空のうんと上のほうの雪は空ほどは白くないのか灰色している
 
閉鎖花じゃないのにスミレ咲かないであたたかな虫の出る日を待ってる
 
ひやひやと雪の匂いの雨の日に寒くてもやっぱ図書館行きたい

 
ハルサリよ一日のみの蜉蝣よヒトも地球のエフェメラルだろう
 
妖精のようなそれとも青い石の名前のようなルーリン彗星

おおいぬのふぐり一面真っ青に咲いてたくさん実をつけなさい
 
真っ青な海をセピアにかえようとイカたち集って墨を吐きました
 
メデユーサの髪の蛇らも春までは眠れ静かな歌を聞きながら
 
寒の戻りお花は急に止まれないヒヤシンスもう咲き出しちゃってる
 
サザンカは去年の秋から咲いていてまだ咲いてるけど春に紛れた
 
宣言があってもなくても南風。春一番のような風です


襟元にノスフェラトゥの薔薇ふたつ人であろうとあるまいといのち

ガーデニングの奥さんそれは花の苗というより実際ホウレン草では

玄関を開けたらいきなり半月が向こうにいたのでびっくりしました

ケムンパスでやんすヒヤシンスでやんす両者互いに挨拶を交わす

梅の香を確かめたくて深呼吸・・・。今日は何処かで牡蠣鍋らしい

咲きたがってた車窓のミモザ今日ついに咲いちゃったのね明日は寒いよ
 
あたたかい風吹き荒れたねヒヤシンスのど乾いたろ?たんと水お飲み
 
未詩を思う未語をも思うそんな名の古の神がいたことも思う


短歌 時のこちら側のフェブラリー Copyright 小池房枝 2011-02-07 20:20:17
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