病んだ薔薇
三条麗菜

拒絶したいものが
多すぎたのです
もはや茎は弱り
棘は何をも
突き刺すことが
できないのです

それでも薔薇は咲いています
誰もその手に触れられないという
誇りの欠片を最後まで持って
そうそれだけは
あの世へも持っていくことでしょう

病んだ薔薇が最後の発色を
その花びらに滲ませて
命の賛歌を歌います
優しくいたわろうなどと
しようものなら
残った力の限り
その棘を振りたてます

私はね
分かっているの
お花屋さんに並んでいる
あんな花にはもうなれないの

元気になって
もう一度
あんな花のようになってね
などと言うつもりなら

命に代えても刺し殺す

心も体も病んだ薔薇が
片隅で咲いています
命を削って咲いています

きっとその花の色こそが
伝説の「ガランス」に違いない

花が死んだところで
そこに花は飾られません
そこには何も残りません

でも誰かの心に
あの色が宿る時
私は一瞬
あの世から還ってくるのです
そして人に
鋭い棘がまた一つ
生まれてくるのです


自由詩 病んだ薔薇 Copyright 三条麗菜 2011-02-03 01:12:19
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