ルイード
番田 


すべての人はどこにもいないものだと私は思っている
素晴らしい 遠くに見える風景は 幻みたいだ
何だろう そこで あまり 素晴らしくないものは
ああ それは 私自身の姿なのかもしれない


そんなふうに思いながら 今日も いつもの坂道を下る
誰でもないままに流れる 街並みの中を
自分が 誰であるとも 気づけないままに 流れる
この流れは いつまでも 止まることはないだろう
流れる光のようなものを 目の中に見つめながら
私は魚のように死んでいくのかもしれないと思った


ぼんやりと川の中を流れていた
銀色をした魚たちの姿を 頭に見つめながら
いつまでも私は流れた
白い釣り糸を垂れながら


高い口笛をそこで吹いていた
最後の一本のタバコをそこで吹かしながら


私は何も主張することなく
何もそこで考えることなく流れていった


私はじっと そこで 何かを見ていた
それは 一体 人の何だったのだろう
ああ 何も感じることなく
そこで 死んで行けたなら 私は きっと うれしい
山奥にひっそりと 一人 言葉もなく 埋葬されて
言葉もなく木のように静かに自然にかえりたい


そして色々な音楽が聞こえていた
様々な鳥の編み出す それは神秘のオーケストラ
きっと 誰にとっても楽しげな音楽の連なりだろう



自由詩 ルイード Copyright 番田  2011-02-01 00:59:50
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