音楽の時間 ; クラシックよく知らないです上から目線 1
salco

 バッハ 無伴奏チェロ組曲
 第一番 プレリュード

緑陰の螺旋上昇 光 反射と拡散 空
素敵なことです、春の一日をこうして
貴方と無伴奏チェロを聴きながら
寝そべっているというのは、人生の上での僥倖ですよ
お尻に萎えた猛子が押しつけられており
胸の柔らかな筋肉が放熱し、平常の呼吸に上下する
愛人というよりは友人であり
というよりは二艘の難破船じみて
老成の幼児のようにただ横臥しているのは安らかであり
暑苦しくもあり
実に儚い調和ですが、至福の余りふと泣きたくなりますよ
スラーヴァのはさ、タッチが硬質でね。途中でフンフン言ってるし。

マイスキーのボヨヨン好みな私がくさせば
ふん、と鼻で嗤った
背を向けていながら目尻の長い皺、破顔がわかるほど仲良し
充分仲良しだよね我々は今週も


 第二番 サラバンド

バッハはいい
やはり父性の大きさが心地よい
音楽の父というより、現代人の父祖みたいな音楽家だ
殊に無伴奏チェロ曲はとてもヒューマンで、感情移入が容易だから
大バッハがさ、ああまで深い悲しみを知っていたとは慰められた
バッハさえ、あのバッハでさえ、ってさ
トッカータとフーガ式や対置法ゴリ押しはあんま好きじゃないけど
チェロという楽器がまたね
ヴァイオリンやピアノは饒舌過ぎて



 チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲ニ長調

でもチャイコDメジャーは好きですけど 
あの第一楽章
張り裂けるほどのエクスタシー
イッちゃう
アレグロ・モデラート、アレグロ・ヴィヴァチッシモ

ロシアのホモはクレイジーだ
あんなパッサージュ、アッタマ変じゃないと書けない 
鎖骨に乗せたペケポコウス歌わす為に
ソリストはあれで歯をやられる
一流どころはみんな顔が浮腫むか、
ハイフェッツみたいに骨相がトーチカ化する
あの顔見た? 
運動不足や顔面共振のせいじゃないの
楽聖の霊感内圧
こんなエクスタシー連日やらされたら腹上死必至
スピリチュアル乞食と違って
舌先三寸を自他共に許さない厳しい世界だ、古典音楽は
音っていうのは可視だから
霊だのオーラだののゴタクソと違って
騙されるアホがいない 何せ 
爪切りと耳掃除が趣味の一言居士が客席に折り重なっている
ひひひ!
キョンファもいいけど、ロン響の音がいまいちスカスカでね、
カデンツァは若弾きのヴァンゲロフぐらいにワイルドなのがいいかな。

ああ、
昔に生まれたかったとは思わないけど
ハイフェッツのメンデルスゾーンは生で聴きたかったな
黄金の左手、神がかりのタランチュラ
月の女神のボウイング

夜にこうして貴方と一度、聴いてみたい気もするけど
もちませんわね、夜まで
くっついていられないとは残念な事です
遺憾ですよ、自分が
そう、貴方の寝息は素晴らしいですよ
そんな風に、疲れた妖精のような


自由詩 音楽の時間 ; クラシックよく知らないです上から目線 1 Copyright salco 2011-01-30 22:39:10
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