平安の塔
北大路京介


京都は現在でも"学生の街"なのだろうか

一昔前、京都市の1割が学生だった
 

バスを待っていたら、近所の大学生らしい娘に声を掛けられて
「 おっ 逆ナンかなぁ? また乙女のハートを奪っちゃったかな? 」
と思いきや

”京都にもスカイツリーを!”
という署名の御願い。。。

泣くよウグイス平安京に合わせて、
794メートル塔の建設がしたいのだそうな

声をかけてきた娘を仮に "お嬢"とでもしておこう
京都市内の大学生らしい


オレ「・・・ なんで、必要なの?」

お嬢「市民の大多数が望んでいるのです」

オレ「 オレの周囲で、そんなこと望んでる人いないけど。。。
   市民っていうのは、なに? 有権者? アンケートに答えてくれた人だけ? 」

お嬢「有権者です。」

オレ「それって、京都のためになるの?」

お嬢「京都は観光都市ですので、観光客をたくさん呼ぶために 日本一の高さを!」

オレ「・・・じゃあ 鎌倉に1192メートルの "いいくにタワー"ができたら??
    ・・・メリットと デメリット考えたことある? 」

お嬢「反対なんですか?」

オレ「 いや、、、それ以前の問題というか。。。
    嫌われることだろうけど、よかれと思って言います。
   あなたが京都のためと思ってることが、
   もしかしたら、京都をダメにすることかもしれない。 」

そして署名しないまま バスはやってきた


署名用紙には
すでに何名かの手書きによる住所と名前の署名と 押印が・・・



たぶん、組織だか団体だか大学に帰った お嬢さんは、
オレのこと 「頭おかしいひとがいたよー」 みたいに言ってるんだろうなぁ
なんか 嫌だなー


「 鎌倉の高い塔
  "いいくにつくろ"で、1192296メートルもありえるんだよ 」

誰にも聞こえない ひとりごと




完成当時は日本一の高さを誇っていた聖徳太子タワー

いまは錆びついて哀愁が漂っている

存在したことさえ 消されてしまっている

塗り替えられる歴史

なかったことに なかったことに

繰り返される歴史

勝者が勝者の手によってつくる歴史

作り直される歴史


架空の人物がいて
架空の人物が創り上げられて
つじつま合わせの行動をして

いつのまにか
捏造された歴史が
常識となり 

高くそびえた塔が 朽ち果てていき
知らぬ間に 塔を建てた資金の一部が少ない給料から引かれていく




「 お金があれば病院に行けるのに 」

そう言ってた 姉さんが死んだ

僕も両親も裕福ではないけれど、
お金を援助しようとはした

姉さんは
「我慢していれば良いから」と、
お金を受け取らず、病院へ行かなかった

僕や両親が、いないほうが
彼女にとっては良かったのかもしれない


自由詩 平安の塔 Copyright 北大路京介 2011-01-29 03:23:17
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