小さな籠の中からこちらを見やる 黒々としたきよらかな眼 欲しがる言葉も持たぬ やわい毛糸玉のような身体を掬い上げ 背筋に鼻先を埋めれば 滴り落ちる真水で濡れそぼる羽 愛することも壊すことも覚えた わたしの手の中でおまえは ただしろく、透き通るほどしろく 薄紅色の嘴を震わせて か細い音でなにかを囀り 近付く清明の気配を感じとっている 土に触れたこともなく 雨に打たれたこともなく ひとつのけがれもなく、白痴を晒し その無垢な眼に見詰められるときにだけ わたしの眉間の皺は弛み ただただ無私のなみだを流せるのだ 瞼を閉じることも忘れ