こしあんルーレット
ハイドパーク

俺は粒あん派だが
嫁の母は
こしあんが大好きだ

好きなだけならいいが
粒あんのことを
下品だとか
気持ち悪いとか
さんざん孤蹴落とす

長期に渡り
生活費の援助を
受けている身では

「そうっすねぇ、あんなのあんこじゃないっすよ。」

なんて引きつり笑いで
受け流すしかないけど
内心!はらわた
煮えくり返ってる

他の事は良いんだよ
かるーい気持ちで
スルーできる
大人だもの
だけど
ああ
粒あん粒あん

はるかかなた
南米の地にあると言う
女だけの王国アマゾネスの
選りすぐりの戦士達の
クリトリスを
じっくりコトコト
煮詰めたみたいな

バリスタも舌を巻く
あの艶
あの触感
ああ僕もう
考えただけで
いっちゃいそう


ある日
夕ご飯のテーブルに
おまんじゅうが並んでいた
だれが買ってきたのかな

「めしと一緒に食うたらエエンヤ。」

お菓子に目がない
お義母さまは
また無茶を言う

「よっしゃや〜、皆いっせいに食べるで。」

それって掛け声で
僕達ファミリィーは
おまんじゅうにかぶりついた

「うぉ、まっずぅ、粒あんやんけ。」

お義母さまはペッて
口から塊りを
お吐きになられた
テーブルにベチョ

その時
僕はあろうことか
「何するんだ。」って
刺すようなきつい目で
お義母様をにらんでしまった

「なんじゃ、われ、文句あるんか。」

ししまった
けど時すでに遅し
盾になってくれるはずの
嫁はんも今日は
女子会で不在

「お前、さてはあれか。こんなけ援助させて、
今日も子供の入学金、30万円払わさせて、
えらいキバむいてくるのぉ。」

「おばあさま、ぼくたちのおまんじゅうは、
みんなこしあんだよ。」

ガキどもが騒ぎ出した

「お前、わての皿にわざと粒あん入れたな。」

そそんなこと
やってませんやってません

『わてへの、嫌がらせか〜』

お義母さまは
食いさしのおまんじゅうを
床にたたきつけた

「やってへんのやったら、これを踏んで見いや。」

踏み絵ならぬ
踏みまんだ
恐ろしいことになった

ごめんね
僕のアマゾネス軍団
でっかいゴキブリを
叩き潰した事のある
いかす立派なスリッパで
お父ちゃんは今
君達を踏みつけるよ

悪く思わないでね
これも生きるためなの
はうあ〜
おまんじゅうは
ビッチャって潰れた

「ほう、やればできるやんけ。
早くティッシュで拭き取って
トイレに捨てて恋や。」

はいって僕
元気良く捨てに行った


今トイレで
ぼろぼろな
まんじゅうを捨てる
人間よもう止せ
こんなことはナウ

しかしどうだろう
なんと一粒だけ
しっかり黒光りする
完全態が残っている

僕は指でツマミ
くちづけし
その娘を愛し始めた

「おばあさま、おっさんが落ちた
おまんじゅうを食べているよ。」

そうだったのか
わがむしゅこよ
お前がスパイだったのか


自由詩 こしあんルーレット Copyright ハイドパーク 2011-01-21 18:43:49
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