即興夜想曲
rabbitfighter

どうしてかわからないけど
思い出すのはいつも彼女のことだ
鏡に向かって化粧をする彼女
まっすぐ伸びた背筋
長い髪
笑った顔
驚いた顔
拗ねた顔

加速するたびに近づいていき
今にも触れられるくらい近くで
それが思い出だと気づいてしまう
触れることだって出来るんだ多分
目を閉じたときに
真っ暗になって
心の中はそんな風に真っ暗で
形も色も距離も方向も隠してしまう
だから
伸ばしたこの手に 君は触れるだろうか
何かが見えたような錯覚に僕は夢中になり
暗闇の中でより暗い君の髪
何度でも巡り合える星の軌道に沿って
暗闇の宇宙を巡る彼らの足跡に沿って
すれ違い
触れて
また巡り合い
夜道を歩けば
曲がり角の先に君がいるような気がして
僕は君に 目を閉じてほしいと懇願し
それで君が目を閉じると
涙があふれ出して零れ落ち
暗闇に吸い込まれていく


自由詩 即興夜想曲 Copyright rabbitfighter 2011-01-21 03:15:00
notebook Home 戻る  過去 未来