御作品
鵜飼千代子

 知らない言葉を知ることは楽しい。
 わたしの知らない世界でどんな言葉がリアルに使われているのか、体感出来るのは嬉しいし、大変なご馳走だ。

 最近、「御作品」という言葉を知った。他者の詩に対して冷やかしやからかいではなく、敬意を込めて「御作品」と言っているのだ。他人様の詩について「御作品」と紹介しているのを聞いていた時には、引っかかりはあっただろうが、「御作品なのだろう」と聞き流していたのだと思う。

 先日、自分の詩について「御作品」と言われた時に、総毛立ってしまった。脂汗が出て来るのではと思ったくらいだ。気持ちが悪かった。

 詩の大先輩たちと関わりを持たせていただくようになって、10年くらい経つが、「御詩集」「御作」という言葉は何度もかけていただいたし、わたしも学んで使っているが、「御作品」は使えない。以前、こうした一連の言葉は、ザーマスババーが使う言葉だと、僻み根性が金ラメを着ているような誰かが言っていたが、出生に関わらず、詩における学び舎の習いで違う言語を用いているのではないかというひとつの仮説を立てた。

 それより、「御作品」という言葉を口にする人については、「詩を何かのツールとして捉えているのか」「詩ではなく、主に作品を作る別のフィールドを持っている人なのか」ということも含め、気をつけるようにしている。相手の詩を読んだこともないのに詩人同士の共通理解をベースに話を弾ませると、面倒なことになることも考えられるからだ。


散文(批評随筆小説等) 御作品 Copyright 鵜飼千代子 2011-01-18 18:25:22
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