キセツ
番田 

海峡の上から荒れ狂う山を見つめていたのは私だ
また 料金所を出入りしている車たちが そこに いくつもある
この街を象徴するかのような 彩り 赤や青に塗られた
ああ 黒い鯨が 波に乗り この街へと また訪れた季節だった
カモメがそれを知らせながら山の上から降りてくる
昨日までの少年強盗団が カフェでなんとなく金を分け合っていた


マッチ売りだった少女はいつかの店に身売りしたらしい
この街は ああ 商売人を受け入れるには 何か 本当に厳しすぎたのだ
ソニーの新工場の計画も白紙に戻されたということだ
あの 200人くらいいた バイトの子は 今はもう 一人も残っていない
やつがどこに行ったのかなんてことを考える人間など一人もいない
もう 誰がどうだったのかなんてことなど そこで 知るものすらいないのだ



自由詩 キセツ Copyright 番田  2011-01-17 02:08:57
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