All About U
草野大悟

ホオジロザメが泳ぐ町で みんなの夢は干涸らびてゆく
魚は漁師を釣らず 熊はハンターを撃たない
鋼板が打ち込まれた日 月は仕掛けを放棄し 干潟は干潟であることをやめた

よく晴れた青が どこまでも深く広がってゆくのはたぶん 
青が青を捨てたがっているからだろう/それが叶わないことを十分知っているのに、だ。

ジャックは切り裂くものを無くしてしまう/迷子のナイフはナイフをやめることしかできず
ジャックには「切り裂かないジャック」として生きながらえるか 刎死するか 
どちらかの選択肢しか残されていない

海は 海であった海の上を 逆立ちしながらポロポロと流れ
血は プライドを纏ったまま息絶えている
それでは 汗はどうだ 肉は 骨は 皮膚は
頭 首 胴 手 足 すべての内臓
忘れ去られた矜持

夜は朝を思い出せない
朝は朝であったことを忘れている
昼は とうに溶けている

ピキピキ鳴きつづける小さな家の二階に 海が潜んでいる
あふれてくる涙は 海の組成と同じだ
ほんとうっぽく笑う風はもう西の空へ沈もうとしている

ほんとはね ほんとは はとんほ なんだ
○のついたトックリは酸漿と仲良しだったときもあったのだ 
朝という名を忘れた朝が大声でやってくる
   


自由詩 All About U Copyright 草野大悟 2011-01-16 14:53:45
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