夏の思い出
吉岡ペペロ

おじさんの葬式にいった
もう何年も無沙汰していたおじさんが死んだのだった
ぼくは棋士にはならなかった
おじさんはずっと独身だった

泣けてきた
幸せとはなんだろう
ぼくが決めることではないと思った
おじさんが決めることでもない
そんなものははじめからない
幸せを人生の基準にしてなるものか

おじさんの自転車に乗せられて
夏の将棋大会に連日かよった
おじさんは母さんの弟で独身でたぶん働いていなかった
ぼくの活躍は地元の新聞でも取り上げられた
<吉岡君の寄せはそれにしても凄い>
その記事はいまでも・・・もうなくしてしまった

おじさんの背中からハチミツの匂いがした
おじさんをお父さんと思おうとするゲームを
ぼくは道すがらひとりでしていた
おじさんだってぼくのことを
そう思おうとするゲームをしていたのかも知れない
ぼくは町景の過ぎるのを見つめながら
ハチミツの匂いをふつうに呼吸した














自由詩 夏の思い出 Copyright 吉岡ペペロ 2011-01-10 01:50:43
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