朝の日記  2010夏
たま

うすい羽のはえた夜行バスにのって
月あかりにかがやくいくつもの雲をこえて
あいした理由も
あいされた理由も
すべてあなただったから

いつもの街角、いつものバス停
やわらかな猫の手に夜の切符をかえして
朝やけの街をあるく
色づきはじめた木の葉は一年分の片道切符
もう、ここが終点
ひと夏の夢はおわったね

木のように生きることができないわたしの
あしたを描くために夜行バスはやってくる
街はいつか森に還るだろうか
ひともいつか野原に還るだろうか
鳥やけものたちがわたしの手足となって
あしたはやってくるだろうか

かわいた落ち葉を踏みしめて
朝のバスを待つわたしの足元に
青い木の実をくわえて鳩がやってくる

ほら、来年の切符だよ。

手のひらにうけとめた木の葉は
眠りはじめたばかりの子どものように重い

ひとも木もおなじように
片道切符を手にして夢をみる
くる日も、くる日も
生まれたばかりの木の葉を手にして
夢をみる
いつか落ち葉になって土に還るけど

それが、あなたのあい
それが、わたしのいのち









自由詩 朝の日記  2010夏 Copyright たま 2011-01-06 21:36:55
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