呪詛
セガール、ご飯ですよ

俺が就職さえすれば
丸く収まると思ってた
独立して生計を立て
両親の負担を減らせば
慢性化したヒステリーも
欠落したデリカシーも
居心地の悪い我が家の
何もかもすべてが
丸く収まると思ってた
それがご覧の有様だ
職にありついてから
ものの2か月足らずで
ご覧の通りの有様だ
職歴ホワイトのこの俺が
未曽有の大不況といわれる
こんなにもふざけた時代に
幾度となく人格を否定されながら
カネさえ貰えりゃクソでも食うと
面接官に媚をへつらい
完全無欠のブラック企業で
月に手取り14万を稼ぐ
正社員の座を掴んだと思えば
途端に色々の箍が緩んで
お袋は重篤な病に倒れ
親父は赴任先で蒸発
俺と違って出来のいい
自慢のかわいい妹さえも
訳の分からない男に騙され
子供と借金をこしらえて
気が変になっちまった
いったいどうなっているのか
俺が就職したからなのか
就職せずにいたからなのか
そんなことを考えている間にも
お袋はみるみる弱っていくし
妹はひとり暗い部屋のなか
膝を抱えてうずくまっているし
俺は俺でまた3時間後には
出勤をしなければならないし
いったいどうすればいいというのか
いったい俺にどうしろというのか
訳の分からない気持ちに疲れて
詩の世界に救いを求めてみたって
とにかく俺には時間がないから
胸の中に渦巻いている感情を
言葉に変換する余裕もねえ
だから俺はもう寝るから
寝て起きて仕事行くから
お前らも早く寝ろ
雨の中を傘もささずに
電柱数えながら誰ともなしに
無表情で祝辞を述べてる暇があるなら
さっさと寝て就職して破滅しろ



自由詩 呪詛 Copyright セガール、ご飯ですよ 2011-01-03 03:34:19
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