昔のクリスマス
砂木

彼の家というものに誘われたのが
初めての クリスマスの夜だった
家族に紹介するというので
料理など持参してみたり
めいっぱい緊張して気を使って
ぎくしゃくと挨拶をすませて彼の部屋に行くと
チョコレートの花が飾られてあった
バレンタインの と思ったが
まだ 付き合いだして間もない頃
誰からのものかとは 聞けなかった

昔の彼女からの とは理解した
いろんな話しからして彼が振られたらしい
余程 大事な人だったんだな
振られたんならしょうがないな
結婚までには片付けてくれるだろうと
漠然と思っていたが結婚してもそれはあった
片付けるに片付けられず 私は見ないふりをした

結婚して初めて迎える元旦 家では
新しいカレンダーをかけかえていた
夫が 水着の女性のカレンダーを
嬉しそうに部屋にかけはじめた
私はすぐに突進してそのカレンダーをはずして
力一杯 破き始めた
何か わめいている夫と大喧嘩になり
私も何か 言い返しながら
ビリビリと細かく引き裂いてゴミ箱に捨てた
裂かずには 捨てずにはいられなかった
ほんとに捨てたいものは 他にあったけれど
そんなことは 言えなかった

チョコの花は 結婚して数年後に
自然と押入れに入れられ
今はもう水着の女の子のカレンダーでも
部屋が華やいでいいやと思うのだけれど

ほんとに言いたいことは言えないまま
余計な喧嘩ばかりしていた
もう思い出すのも遠い 若い頃の事

 


自由詩 昔のクリスマス Copyright 砂木 2010-12-26 15:34:35
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