きょうの料理 12月号
salco

 〜年末特集・新案おせち〜            
                           監修・料理研究家 尾上トメ


壱の重 … 
大王松の葉、竹の輪切り、梅の実を入れる(梅酒のや梅干しでも可。梅以外は食えない意匠のめでた
さを狙うので、活き亀を加えてもよい。天然記念物につき丹頂鶴の頭部は不可)。


弐の重 …
《きんとん》
・逆きんとん 
栗のペーストに金時芋の甘露煮を入れたもの(市販のペーストは豆混入製品でないものを。茹で栗
の処理が面倒ならば、むき甘栗をフードプロセッサーで粉砕してから裏漉しする)。
アレンジ
・ヘルきんとん 
かぼちゃのペーストに京人参のグラッセを入れたもの(オレンジに赤の配色が邪まだがヘルシー)。

・地味きんとん(別名 蝦夷きんとん)
甘藷の代わりに馬鈴薯を使い、栗の代わりに大納言を使う。面倒な場合は甘納豆で可(有難味に欠けるが
質実な配色も楽しくカロリーに大差なし)。



《黒豆》
・パンク黒豆 
煮る時の錆び釘を増量して(20〜30本)、そのまま盛り付ける(マメに暮らすだ? ファック
だぜ小市民根性というスピリットを表現)。
アレンジ
・フューチャー黒豆 
予備知識なく煮て、豆の皮が全部破れるか硬化して皺が寄ったら成功(自己の将来像を暗示し覚悟を促す)。



《なます》
・紅白なまじ
しらたきの塩茹でとカッペリーニのボロネーゼ(共に冷製)を和える(紅白ならめでたいのか? 
なますなんてちっとも美味しくないし三が日も生野菜が買える物流状況でもう要らないだろーとい
う提案)。


《田作り》
・子作り
耕作面積の減少は諦め、少子化解決のため多産を祈願し子持ちししゃも(カペリンで可)の佃煮で行く
(生臭くなるのでカラカラに焼いてから飴煮にすること)。


《数の子》
・数の子 
酒1しょうゆ1みりん1で煮沸してしまう(ただのいやがらせ)。


《いくら》
・いくら醤油漬け 
マヨネーズで和えてしまう(見た目だけでなく、コレステロール倍増のいやがらせ)。ビールに添え
て出せばプリン体フェスティバルにもなる。


《伊達巻》
・マジ伊達巻
自家製の場合はよく焦がした面を上にして巻く。市販品の場合は焼き直して表面をよく焦がす(日サ
ロ通いのホストやおかサーファーをイメージ)。
アレンジ
・ダテ伊達巻
よく焦がした出汁巻き玉子か、市販の太巻きで代用(お重を開けてガッカリ狙い)。



《蒲鉾》
・ゴシックかまぼこ
白い方をイカスミで染め、赤い方を食紅で強化(スタイリッシュな食傷を狙う)。
アレンジ
・フェルメールかまぼこ
白1本を縦半分に切り、片方を黒に染めて市松に配置する(1片ずつ白黒に並べた場合は鯨幕髣髴となるので、
喪中家庭用にしてもよい)。

・ビンボーかまぼこ
安いかまぼこは美味しくないので、チーかまと魚肉ソーセージ(チーかまの太さに合わせて縦切り、盛り付けは
重箱の高さに合わせて積み上げる)で代用。味的には、年少者にウケる。



《昆布》
・子持ち昆布又は昆布巻き
市販品を入れない場合は、子持ち親馬鹿でも対座させて正月早々話題にうんざりすれば充分。



参の重 …
《魚介》
・有頭海老の酒蒸し煮又は塩蒸し
下半分の殻を剥いて背わたを抜いたら腹側の筋を3〜4箇所切り、竹串を通してエビ反らせる(サデ
ィスティックな潜在意識が喜ぶ姿態)。


・ぶり照り焼き又はさわら西京焼き 
テリーヌを照り焼いたもので代用。(冷えた焼き魚が美味しいか? これと大異ないだろーというア
ンチテーゼ。種類によっては焼くと溶けるので、たれを絡める程度にすること)。てりやきバーガー
の中身でも可。


・帆立貝柱
バターでソテーし生クリーム又はベシャメルで仕上げたフレンチ風。
しょうゆ味よりよほどゴージャスで美味。傷みやすいので冷蔵又は冷凍し、別器で提供の都度チンする。


・いか松笠
飾り包丁を松笠ではなく古代エジプト文字又はヘブライ語で入れると、ロゼッタストーンかモーセの
石盤じみて有難い(文化の成り立ち又は真髄を象徴)。


《煮物》
・五目煮又は筑前煮
全部トマトソースで煮込む(正月塩分摂り過ぎだろお前、という配慮。ダイエット中の場合はこんに
ゃくだけにしてあげる)。


《その他》
・錦玉子、松風焼き、ふき煮、ごぼう巻き、胡桃小公子、ローストビーフ、スモークサーモンのマリ
ネ等はいわゆる重箱の隙間塞ぎで駄洒落るのも面倒臭いので、割愛してよい。


《おぞうに》
・非雑煮
焼き餠を椀に入れ、永●園お吸物の素を加えて熱湯を注ぐ(ぞんざい極まる生活態度の親を象徴するが、
雑煮としてのエッセンスは同等)。
アレンジ
・死蔵煮
白味噌仕立て。亡き祖父のロレックスやオメガ、コルム(当然、生活防水以上)などの腕時計又は亡き祖母の指輪
や帯留めを仕上げに入れる。当たった者がお年玉として受け継ぐ(時計は型が古くてダサく、指輪もリフォーム厳
禁のルールで着用できない仕組み)。



   きょうの料理1月号は 〜新春大特集・新案節分豆〜 の掲載を予定しております。
   定期購読のお申し込みは書店、またはZHK料金徴収課・門倉喜三郎まで。


散文(批評随筆小説等) きょうの料理 12月号 Copyright salco 2010-12-18 21:25:13
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