食物連鎖と転生と
相差 遠波

海の味を覚えている
アサリよ アサリよ
お前が居た海の味をこの舌は知っている

私は明日 おまえを食べるだろう
そのために舌で味を見ながら
砂を吐かせるための塩水を作る

おまえはそんな運命も知らずに
久方ぶりの上潮じゃと
笑っているような
目のような形をした排水器を延ばし
砂を吐いて生きる

海の味を知っている
アサリよ アサリよ
お前が居たという
私の故郷の海の味を覚えている

私は何時か 死んで灰になるだろう
それまでは故郷の祖先がそうしたように
お前を舌で味わいながら
肉を養って生きていく

できれば灰は海に撒いて
溶けた私の成分が
お前の遺した子孫達の
肉を養って活かせればいい
溶けた私の石灰質が
あの美しい貝殻になれればいい

海の味を覚えている
アサリよ アサリよ
祖先が居た海の味をその舌は知っている





自由詩 食物連鎖と転生と Copyright 相差 遠波 2010-12-15 10:51:26
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