ひとつ こがね
木立 悟






顧みられない壁の横で生まれ
白も黒も知らずに白と黒になり
街を隠す羽を動かしている


冷たいにおい
曇を遠ざけ
冷たいにおい
手の甲を踏む


街に沈む街
機械は静か
鏡の前へ
午後は午後を連れてゆく


どこかで
鳴りつづけている鈴
向こう岸の子
ほんとうの ほんとうの
名前を呼ぶ


にぎやかでささやかな
無為の朝のあと
空には
閉じるしるし
呼吸のように
屠られる言葉


たくさんの小さなものが眠り
指や頬や
くちびるから駆けのぼり
空に触れる夢を見る


沈む やわらかく
沈む
波うつ空に
紋の上に
紋をこぼす


こがねいろ匂う子
もとめてももとめても
白く白く遠去かり
海は ふところの午後をひらく
坂からも
街の下への入口からも
見えるように

































自由詩 ひとつ こがね Copyright 木立 悟 2010-12-09 19:19:19
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