導線はいつか
高梁サトル


誰も
事が明瞭になることを望まない
夜更けに
蝋燭の灯を囲んで
妥当な食事にありつく
静かな眠りにつく毎夜ごとに
吐き出される
それが獣の吐息であっても
夢の中では人の姿をしている
私たちは
研ぎ澄まされた無重力に
ユーリが真っ暗な宇宙で信じたものを
思っている

きみの神経に僕のそれを
繋ぐことができたなら
どんなにかこの世界は華やいで
報われることを知るだろうに

誰かが目を閉じて理解したことのすべてが
誰にも届かなくても
私たちは
思うより強い
奪い合う行為に似ているすべては
失うこととはまるで違う

耐え難い弱さの前で
何度も膝をついた金属の
喉元で消えた思いは
どんな音だったのだろうかと
考えるときに綻ぶそれは
紛れもない
花なのだろう

錆びた導線が
どこまでも
真っ直ぐに伸びて
どこからか
蔦に変わって
いつからか
大気に溶けて
消えてなくなる

いつかかたちになると思っていた
こころは
失ってもそこにあることを
伝え続ける
言葉を


自由詩 導線はいつか Copyright 高梁サトル 2010-12-04 09:37:49
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