空を追って
ふるる
さざなみと待ち合わせの時間だった
薄くなってゆく空とおおいかぶさる雲
淡い紫色とオレンジ色
飛行機の窓から見える雨の気配
寄り添えない事情がある
耳あてに、やわらかい言葉がくっついている
優しさというの?
本の背表紙についたほこりを払って
あなたはまだ眠りの中で
きっとずっと先まで目覚めないけれど
頬に銀の光が差し込んで
それは季節の秒針なのだけれど
白い階段
スリッパでのぼってゆく
気持ちのよい広場まで少し
花を盗んで飾りたい
横丁の片隅に
それから
レールのそば
秋にはおいしい実がなることでしょう
それでこの本はおしまい
さみしいけれど閉じて
さみしいけれど忘れて