取り分けるひと
恋月 ぴの
あり合わせの野菜と特売の豚ばら肉で作った野菜炒め
ちょっと辛めなのは彼の好みで
できたての熱々をふたりのお皿に取り分ける
彼はと言えば相変わらずのパソコンに熱中していて
彼のお皿にはお肉を多めに
それと嫌いなんだとお箸で除けてしまうニンジンも多めに
ふんふんとそれはそれで幸せなひととき
それでもねテレビとかで見聞きする哀しいニュースを思い出してしまう
育ち盛りだもの、誰だってお腹いっぱい食べたいよね
できたよ♪
なんて声をかけても毎度毎度の空返事
あのさぁご飯食べられるだけでも幸せなんだから
テーブルの上に散らばってるレシートなんかを脇に寄せ
結婚してもいないのに揃えたのは
夫婦茶碗に
夫婦箸
おっきい方が私のだよと言いたいところだけど
貞節なおんならしさってのもありそうで
お腹いっぱい食べられる幸せ
当たり前すぎることぐらい当たり前であって欲しいのに
そうじゃない
誰のせいだか判らないけど
パソコンの前から立ち上がってきた彼は
テーブルに背を向けて涙なんか流してる私の姿にキョドってた