取り分けるひと
恋月 ぴの

あり合わせの野菜と特売の豚ばら肉で作った野菜炒め
ちょっと辛めなのは彼の好みで
できたての熱々をふたりのお皿に取り分ける

彼はと言えば相変わらずのパソコンに熱中していて

彼のお皿にはお肉を多めに
それと嫌いなんだとお箸で除けてしまうニンジンも多めに

ふんふんとそれはそれで幸せなひととき

それでもねテレビとかで見聞きする哀しいニュースを思い出してしまう
育ち盛りだもの、誰だってお腹いっぱい食べたいよね

できたよ♪

なんて声をかけても毎度毎度の空返事

あのさぁご飯食べられるだけでも幸せなんだから

テーブルの上に散らばってるレシートなんかを脇に寄せ
結婚してもいないのに揃えたのは

夫婦茶碗に
夫婦箸

おっきい方が私のだよと言いたいところだけど
貞節なおんならしさってのもありそうで

お腹いっぱい食べられる幸せ

当たり前すぎることぐらい当たり前であって欲しいのに
そうじゃない
誰のせいだか判らないけど

パソコンの前から立ち上がってきた彼は
テーブルに背を向けて涙なんか流してる私の姿にキョドってた






自由詩 取り分けるひと Copyright 恋月 ぴの 2010-11-29 19:59:09
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